お金に支配されない生き方|50代がエアコンひとつで気づいたこと
エアコンを買った。
9万円のやつを。
即決で。
寝苦しい夜が続いていた
昨年の夏、リビングのエアコンの風がかろうじて届く寝室で、なんとなく涼しいけど暑い、という夜が続いていた。
窓を開けて寝た。
扇風機をつけて寝た。
それでも熱帯夜は寝つきが悪くて、翌日疲労感が抜けないことがあった。
寝不足で思考も鈍る。
夏はしんどい季節だと思っていた。
その夏、ニュースでこんな話を見た。
「電気代がもったいない、まだ耐えられる」とエアコンをつけずに亡くなるお年寄りの話だ。
年齢とともに体温調節機能が低下して、熱中症になっていることに自分で気づけなくなるという。
53歳の俺は、「暑さくらいで」と強がっていた。
でも正直に言う。
自分も予備軍だと思い始めていた。
今年の夏が来る前に、動くことにした。
「荒い」と言われた
妻と娘が話しているのを聞いた。
「最近パパのお金の使い方が荒い」
笑った。
荒いんじゃない。
基準が変わっただけだ。
2万円高いエアコンを選んだ。
理由は故障が少ないから。
うちで19年現役のエアコンがある。
同じメーカーだ。
その実績を見れば、2万円の差は誤差じゃなくて投資だと思った。
妻は「安い方でよかったんじゃない、ただのエアコンだし」と言った。
それはそうだ。
でも以前の俺も同じことを言っていた。
5年前、妻の寝室のエアコンを買った時、安い方を選んだのは俺だ。
そのマインドを妻に植えつけたのも俺だ。
だから責める気にはなれない。
むしろ、ずっと協力してくれていたんだと申し訳ない気持ちになった。
お金に引っ張られていた頃
住宅ローン、子供の学費、老後の貯蓄——そういうものが頭を占領していた。
40代に入った頃から、家電の買い替えは年間10万円以内と決めていた。
家計全体を見渡して、どのくらい余裕があるかを考えた時、10万円以内ならどうにかなると思っていた。
家電には寿命がある。
その年に必要なものを買い替えて、余裕があれば翌年に繰り越して大きなものを買う。
それが俺なりの現実的なルールだった。
それでもお金を「守るだけ」にはしたくなくて、インデックス投資は40代後半から少しずつ始めていた。
ただ本格的に動かせるようになったのは50代に入ってからだ。
でも、自分の快適さにお金を使うことへの抵抗感は、まだ残っていた。
エアコンひとつ、家電ひとつ、自分のためになるものは後回しでいいと思っていた。
気づくのが遅かったかもしれない。
でも、手遅れになる前だった。
複利が効くかどうか
IHクッキングヒーターが壊れた時も、即決で5万円かけて交換した。
妻が毎日ボタンの反応に苦労しているのを見ていた。
毎日のストレスが減るなら、5万円は安いものだと思った。
エアコンの9万円も同じ発想だ。
快適な睡眠が取れれば、疲労回復が変わる。
翌日の思考が変わる。
仕事のパフォーマンスが変わる。
昨年の夏に感じたしんどさは、睡眠の質が落ちていたからだ。
その連鎖を断ち切るための9万円なら、安いものだと思った。
今、お金を使う基準はひとつになった。
複利が効くかどうか。
健康・時間・体験——そこに使ったお金は、時間が経つほど価値が増える。
逆に、節約してお金を手元に置いておくだけでは、何も増えない。
お金は道具だ。
目的じゃない。
支配が緩んだ日
エアコンを即決した後、不思議な気持ちになった。
お金に支配されていた頃の俺は、この安心感にお金を使えなかった。
今年の夏は、気持ちよく眠れる。
その安心感が、夏の訪れを待ち遠しく思わせてくれた。
妻のマインドも、これから一緒に変えていけたらいいと思っている。
それくらいの余裕が、53歳になってやっと出てきた。
お金を使う基準が「複利が効くかどうか」に変わった日から、お金は敵じゃなくなった。
