自分を整える

ずっと開いたままのウィンドウがあった|50代が気づいた、両親と向き合う時間の価値

バマ

電話の向こうで「大丈夫」と言われるたびに、心のどこかで小さな疑いが残る。
それが積もっていく。

電話越しの「大丈夫」に潜む想像

両親には定期的に電話をしている。
声を聞けば、元気なのか、少し疲れているのか、なんとなくわかる。
でも、体調が悪そうな話し方をされると、そこから想像が始まる。

どのくらい悪いんだろう。
無理して明るく振る舞っているんじゃないか。
心配かけたくなくて、実際より軽く言っているんじゃないか。
一度想像が動き出すと、根拠のない悪い方にばかり考えが向かっていく。

言葉というのは、いくらでも取り繕える。
「大丈夫」の一言で、こちらを安心させることもできてしまう。
でも、その言葉と、本当の状態が、ズレていることがある。

会いに行って、初めてわかること

だから、たまに会いに行く。

顔を見て、話をして、表情を見る。
体調が悪い時は、笑顔がどこか強張る。
冗談を言っても、受け答えがどこか一枚薄い。
心配かけまいとしているのが、逆にわかってしまう。

言葉は取り繕えても、表情は取り繕いきれない。

先日、久々に会いに行った時は、たまたま妹も帰省していた。
それだけで、父の機嫌がいつもよりずっと良かった。
冗談を言い合って、よく笑っていた。
会話の一つひとつが軽くて、体調の話をしていても、深刻な空気にならなかった。
その顔を見て、素直に安心した。

電話越しの想像では、絶対にたどり着けない安心感だった。
妹の帰省という、たまたま重なった環境が、父の機嫌をさらに底上げしていたのも見えた。

常にアイドリングしている案件

両親のことは、普段はそう頻繁に考えているわけじゃない。
仕事もあるし、家族のこともある。
目の前のことで頭はいっぱいだ。

でも、心のどこかでは、常に動いている。
パソコンでいうウィンドウが開いたままになっていて、画面には出てきていないけれど、確かに動いている状態に近い。
急な電話が鳴った瞬間、そのウィンドウがいきなり前面に出てくる。
ドキッとするのは、それが理由だと思う。

普段は表に出てこない。
でも、消えているわけでもない。
ずっとそこにあって、脳のリソースを少しずつ使っている
他の家族のこととは、また少し違う種類の重みだと思う。

老いていくほど、増えていく重み

両親は歳を重ねている。
すでに大きな病気を経験していて、命に別状はないにせよ、体調の波はある。
今は「心配するほどではない」という状態で、それだけでも十分ありがたい。

ただ、この先を考えると、普段は静かなこの案件が、ある日突然、大きな影響力を持って前面に出てくる確率は、年々上がっていく。
普段は目立たないのに、来る時は一気に来る。
そういう種類の案件だ。

だからこそ、いつか来る「突然」への準備を、少しずつ意識するようになった。
備えておくといっても、特別なことをするわけじゃない。
心のどこかで、その日が来ることを、静かに知っておくだけでいい。

今の自分にできること

想像で不安を抱え込むより、実際に会いに行って、表情込みで確かめる方がずっと確実だ。
そしてその「会いに行く」という行為自体が、相手の機嫌や状態を良くする力を持っている。
安心を得るだけでなく、相手にとっても意味のある時間になる。

開いたままのウィンドウを完全に閉じることはできない。
それでいい。
ただ、たまに顔を見に行くことで、そのウィンドウを少しだけ静かにすることはできる。
それを、これからも続けていくつもりだ。

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ABOUT ME
バマ
バマ
50代の再チャレンジャー
アスレティックトレーナー/トレーニングコーチ。 プロとアマチュア、両方の現場で四半世紀以上、選手と向き合ってきた。 50代になって気づいた。自分を一番蔑ろにしていたのは、自分自身だった。 体を整え、思考を整え、暮らしを整え、そして自分を整える。 守りから、前へ。
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