思考を整える

待つことも、言葉のうち|50代が見つけた、伝える加減の見極め方

バマ

仕事でも家庭でも、どこまで自分の意見を話していいのか、迷うことが増えた。

老害という言葉が、迷いに拍車をかける

世代差、立場、経験年数。50代になると、それらが言葉に重みを乗せてくる。

会社の方針、男女の思考の違い、ゆとり世代との当たり前の違い。
なんでもない会話が得意じゃないから、ついつい説明じみた話し方になってしまう。
何にでも意味や価値を見出そうとする癖がある。

老害、という言葉がある。
その言葉が、余計な話をしないようにした方が傷口が小さくて済む、という発想に拍車をかける。

でも、我慢していて、たまに話す。
それが重い。
多すぎる。
相手はお腹いっぱいになっている。
そんな葛藤の中で過ごしている。

我慢しておいてよかったこと

選手には、大雑把に考える方が乗り越えられる場面がある。

こちらがその考え方を先に伝えて気づかせるより、自分で気づいてものにする方が、思考には残る。
答えに至るまでの試行錯誤——その過程そのものが、思考を整理する材料になっているからだ。

こちらが伝えると、答えだけが先に手に入る。
過程から得られるはずだったものが、丸ごと抜け落ちる。

サプリメントでビタミンCを摂るのと、野菜からビタミンCを摂るのは、ビタミンCを摂るという行為自体は同じだ。
でも、野菜には他の栄養素という特典がついてくる。
伝えることと、気づかせることの違いは、それに近い。

言わなきゃよかったこと

伝えたことで、選手が考えすぎる方向にシフトしてしまった場面がある。
細かいことを気にする場所が増える。
ネガティブになる。
いつまでも満足できない。
不安になる。

言葉という力の影響力の高さを、再認識した瞬間だった。

もう一つ、心当たりがある。
相手を良くしようと、こちらの思いを一方的に伝えて、いくつものエクササイズを提示する。
うまく機能しているか、パフォーマンスを見て確認する。
エラーを見つけたら、また指摘して修正する。

この行為の盲点は、いつの間にか、自分自身の満足度を上げるためのサイクルになっていることだ。
選手個人の感覚や感想のフィードバックをしっかり行わず、こちらだけがどんどん良くなっていると勘違いする。
まさに老害スタイルだ。
良いと思っているのは当人だけで、選手本人にとって、それがやらされている感じになっている場合もある。

待つことの、副作用

だから最近は、聞かれるまで待つ、というスタンスでやっている。
まずはたわいもない会話をする。
相手から聞いてくるまで、こちらからは動かない。

でも、待ちすぎているかもしれない。

パフォーマンスやルーティンは、目で見える。
でも、その選手がどういう考えでそれをやっているのかは、想像するしかなくなっていた。
待つことを優先しすぎて、コミュニケーションそのものが浅くなっている。
そんな感覚がある。

家庭でも、同じ迷いがある

待つことの難しさは、家庭でも変わらない。
ただし、家庭には仕事とは違う制約がある。

娘たちには、自分から勉強の必要性に気づいてほしいと思っている。
テストで悪い点を取って、恥ずかしさや悔しさを味わって、初めて実感するものがあるからだ。
だからできるだけ言わないようにしている。

でも、あまりにやる気配がないと、つい言ってしまう。
大学受験には期限がある。
時間の大切さを、こちらは知っている。
当の本人は、まだそこまで焦っていない。

自分自身も高校生の時はそこまで気づけなかったのだから、しょうがないとは思う。
過程が大事なこともわかっている。
それでも、我が子のこととなると、そうもいかなくなる。
それが、待つことの一番難しいところだ。

待つことと、聞きにいくことの間

実際に聞いてみて、その考えを理解する。
それだけで、同じ行為の意味が違って見えてくる。
アドバイスも、より的確になるはずだ。

大事なのは、こちらがどう手助けするかより先に、選手がどう考えてそれを実行しているかを知ることだった。
急かして引き出すんじゃない。
導き出せるようにする。

娘たちも同じだ。
あの手この手で、本人が自分で気づけるように仕掛けていく。
それが、親の役目の一つなんだと思う。
だからこそ、コミュニケーションの間(ま)そのものが大事になる。

黙っていることも、言葉のうちだ。
でも、黙り続けることが正解でもない。

待つことと、聞きにいくこと。
その間(あいだ)を見極め続けることが、伝える加減なんだと思う。

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ABOUT ME
バマ
バマ
50代の再チャレンジャー
アスレティックトレーナー/トレーニングコーチ。 プロとアマチュア、両方の現場で四半世紀以上、選手と向き合ってきた。 50代になって気づいた。自分を一番蔑ろにしていたのは、自分自身だった。 体を整え、思考を整え、暮らしを整え、そして自分を整える。 守りから、前へ。
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